国際離婚
結婚するのは簡単だけれど、離婚するのは難しい。それは何も国際結婚に限った話ではありませんが、国際離婚にはいろいろ特有のハードルがあります。
●協議離婚でいけるか?
離婚届に判子を押すだけで離婚ができてしまう協議離婚制度があるのは、日本・韓国・中国・台湾など一部の国のみであり、他の国では何らかの裁判所の手続が必要です。
そこで、まず協議離婚の制度について外国人夫(妻)に理解してもらう必要があります。また、日本での協議離婚の有効性を認めてくれない国もあるため、外国の官庁に提出するため、あえて合意の上で調停を申し立てて、裁判所の公印入りの調停調書を作成する場合もあります。
●相手が出国してしまったら?
協議離婚に向けた話し合いができる場合はまだよく、国際結婚にありがちなケースとして、相手がどこにいるかがわからないという場合があります。別れた相手が日本を出国してしまうと、居場所を探すことは困難です。なので、法務省の出入国記録を照会し、日本を出国しているかどうかを調べます。
相手が既に出国している場合、日本の家庭裁判所が離婚調停・訴訟を受け付けてくれない可能性があります。
判例では、離婚の国際裁判管轄は、原則として被告の住所地にあり、例外的に、遺棄・行方不明・その他これらに類する場合にのみ、日本の家庭裁判所が離婚訴訟を受け付けてよいとされています。
ですので、例えば家を出て行った夫の住所が米国であれば、基本的には米国の家庭裁判所で離婚訴訟をやってください、ということになります。
とはいえ、夫が家を出て行ったのであれば「遺棄」が認められる可能性がありますし、出国してどこにいるのかわからないのであれば「行方不明」として取り扱われるため、通常は日本の家庭裁判所が訴訟を受け付けてくれると思われます。
●日本の家庭裁判所で離婚訴訟をするメリット・デメリット
日本の家庭裁判所で離婚訴訟をするメリットは、夫婦の一方が日本人であれば、日本法を適用して離婚ができるため、親権者を夫婦の一方の単独親権にすることができます。これに対して、日本以外の国では離婚後も共同親権が通常であり、単独親権をとることは困難とされています。
一方、たとえば米国所在の資産について財産分与を受けたい場合や、確実に養育費を支払ってもらいたい場合には、日本の家庭裁判所の判決を米国で執行することは、現実には難しい場合もあるため、最初から米国の裁判所で離婚訴訟をしたほうがよい場合もあります。また、養育費の支払いについては日本よりも米国の制度のほうがしっかりしていると言われています。